グッピーを見ると思い出すヒロくん。

小学校3年生の時、クラスメイトにヒロくんがいた。

ヒロくんは特別支援学級と僕たちのクラスを

必要に応じて行ったり来たりしていた。

基本的には僕たちのクラスにいて、

給食も一緒に食べていた気がする。

一人で家に帰ることができないヒロくんのことを

毎日誰かが送っていた。

僕はよく送っていっているユウキと仲が良かったので

たまに一緒についていった。

そこにはビックリするくらいたくさんのグッピーがいて

子供が生まれたりしていた。

生き物が好きだった僕はそこでヒロくんのお母さんから

お菓子をもらいながらそれを眺めているのが好きだった。

ヒロくんは一人では何もできなかった。

ピョンピョン飛び跳ねることが好きだった

ヒロ君には子供の無邪気な悪意がぶつけられることがあった。

休み時間にからかわれるのが日常だった。

そんなある日、現場を通りがかった特別支援学級の

ヒロセ先生が泣きながら怒鳴った時に

悪ガキたちはイジメるのをやめた。

普段は温厚で、冴えないおじさんのような

存在だったヒロセ先生。

僕はただの傍観者だった。

ヒロ君のお母さんが夜、お風呂に入る前に

服を脱がせる時。

服が汚れていることもあっただろう。

体にアザがついていることもあっただろう。

痛いとも言えなかったヒロ君。

グッピーを見ると思い出す。

小学校6年生の卒業式の後、

みんなが進学する中学校にヒロ君はいなかった。

隣の市にある養護学校に行っていると聞いた気がするが

記憶が定かではない。

卒業式で特にサヨナラをした記憶もない。

今、どうしているだろうか。

あのやさしいお母さんはどうしているだろうか。

静かに暮らしているだろうか。

僕にはきっと謝らなければいけないことがあったはずだ。